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なろう少女小説のススメ

なろう小説の中でも少女小説っぽい作品(独断)をレビューします。

レビュー:マニュアル人間は嫌われる『召喚聖女籠絡マニュアル』

異世界にトリップして、何もない荒野で数日間彷徨う。もう死ぬんじゃないか、と思った時に差し伸べられる救いの手。それで、その手の持ち主がイケメンだったりした日には、若いおなごなら恋に落ちて当然。……異世界トリップの定番ストーリーはだいたいいつもこんな感じ。どうして? そりゃあ「マニュアルにそう書いてあるから」に決まってるじゃないですか。

「お約束」をメタった視点が、ありそうでなかった。それ以外はもちろん「お約束」を丁寧に踏襲。どちらかと言えばRPG系の設定で、ベタベタな「聖女の降臨」なんて魔法の効果には主人公でなくても苦笑い。

4話完結、さくっと読める異世界トリップモノです。


召喚聖女籠絡マニュアル(作者:砂村(ま))

レビュー:シリアスなのになりきれない『神様は、少々私に手厳しい!』

いつからお前は「異世界トリップでは言葉が通じるのは当たり前」だと思い込んでいた……? 『神様は、少々私に手厳しい!』は王道かつシリアスな展開にも関わらず主人公の言動が珍妙なせいでどうしてもコメディにしか分類できないラブコメ?異世界トリップです。

確かに疑問だったんですよね……。なんで異世界で、当たり前のように言葉が通じるのか? 会話はOKで読み書きはNGなのは何故? 主人公補正と言われればそれまでですが、よくよく考えたらおかしくないですか?

誰もが抱くこの疑問(異世界言語問題)を避けずに取り扱ってくれたのがこの作品です。……いや、そういう作品は他にもたくさんあるんです。言葉を上手く喋れないヒロインって萌えるしね。でも、この作品の主人公カズキの言語能力はちょっと壊滅的すぎる。一度日本に帰還して再びトリップする、いわゆる出戻りトリップなんですが、出戻り後一言目の会話文で、おや?って思いましたよね。なんかね、語尾に「ぞよ」ってついてるんですよね。……残念すぎる。しかしそれがこの作品の味でもあります。話を追うごとに展開はどんどんシリアスに。せっかく再開した恋人同士なのに引き裂かれ、ヒロインは満身創痍、国家間の政治的な問題が……って感じなのに、「ぞよ」「ぞろ」「にょろ」って、ああ締まらない! でもそれが! いい! 珍妙な言葉選びと明るく前向きで健気な主人公の性格が癖になります。

現在31話まで連載中、一緒にカズキの奇怪言語の虜になりましょう?


神様は、少々私に手厳しい!(作者:田上 伊音)

レビュー:中華風異世界トリップの正統派『ソラヨミシ』

なんとなく、異世界トリップというと中世ヨーロッパ的世界観へのトリップを連想してしまう中村ですが、中華風世界観てのもまた良いものです。『ソラヨミシ』は気象予報士の葉月が中華風異世界で天気予報をするお話。

この作品のキモは、やはり葉月の気象知識を駆使した事件解決でしょうか。現代の知識を使って科学の進歩が遅れている異世界で活躍する――というのは、異世界トリップの醍醐味の一つではありますが、主人公の持っている知識があまりにも特殊だったり、立場からかけ離れていたりすると少々興ざめ……というか、主人公に感情移入したい少女小説読者は置いてけぼりにされてしまいます。その点このお話が扱うのは、天気という身近ながら専門性を有する分野なあたり、絶妙。中華風、というかほぼ古代中国という舞台も葉月の「空読み」に信憑性を与えてくれます。

一章ごとにまとまっているので読みやすいので、時間のない方にもおすすめ。章を追うごとに葉月を取り巻く恋愛事情も進展していきますが、最終的には誰とくっつくんでしょうかねー。やっぱり”死神”こと湖長官でしょうか。現在第6章、41話まで更新中です。


ソラヨミシ(作者:松 茉莉)

レビュー:一人で生きるってむずかしい。『払暁』

異世界トリップとともに王子様が迎えに来る――なんて古風な異世界トリップは最近じゃもう殆ど見つけられません。か弱いヒロインに共感する時代は終わりました。『払暁』は、誰に助けられずとも一人で強く生きてきた主人公ハルカの強さにシビれる作品。

中世的な世界で女性が一人生きるというのは、大変なことなんでしょう。男と偽り戦場にまで出て、英雄と祭り上げられる存在にまでなる彼女は、異世界召喚の一方的な被害者でありながら一人で強く健気に生きています。決して弱さを見せないだけの強さを持っているから大丈夫に見える。けど、どこか危うい立ち方を見ていると、もう救われてもいい、誰かにすがってもいい、幸せになってもいいと願わずにいられません。

リカルド、お前、少年のフリしてるハルカ様に犬の如く額ずいてる場合じゃない! はやく彼女の横に立って支えてあげるんだ! 途中のアレは完全にBLになっちゃうからな!? そりゃグラハムも心配するわ!!

2010年から連載されているこの作品、私もかれこれ3年以上は追いかけております。あまり更新頻度が高くないので、長い時は一年単位で待っていた時もありますが、最近また更新されているので嬉しい限り。現在55話まで連載中。完結が待ち遠しい作品です。


払暁(作者:100y)

レビュー:悪役令嬢は悪役目指してまっしぐら『アルバート家の令嬢は没落をご所望です』

乙女ゲー転生モノ、好きなんですが、いかんせんどの作品も長いのがネック。読み始めるのを躊躇う長さのが多い。ですがこの『アルバート家の令嬢は没落をご所望です』コンパクトにまとまった良作。「その後のお話」が始まってますが、本編がちゃんと完結してるので気軽に読めますよー。

主人公メアリが、ここが乙女ゲームの中であると気がついたのは高校の始業式の最中。このままでは没落ルート一直線の人生を、なんとか回避しようとする……のではなく、ゲームどおりに没落目指して奮闘するわけですが、メアリの空回りっぷりと言ったら。ヒロインポジションのアリシアに対して、ちゃんとキツいこと言ってるのにね…あれは全部アリシアちゃんがポジティブすぎるのが悪いよね…。

悪役令嬢のメアリがこんなんですから、登場人物に悪い人が全然いないってのも、かるーく読めていいです。苦労性キャラと思いきや銀魂の山崎みたいなお気楽ポジションの従者アディくんはお気に入り。シリアスになりきれない二人のやりとりがなんとも痛快です。

まだ「その後のお話」は読んでないんですが、そっちも、完結したら読もうかなあ。


アルバート家の令嬢は没落をご所望です(作者:さき)

レビュー:ほんわか小鳥ライフ『あなたのための月の守護鳥』

タイトルって、大事だと思うんです。昨今は文章系タイトルが幅を利かせてますが、やっぱり短い単語で話の内容がわかって、かつ口にのせてしっくり馴染むってのがタイトルの要件ってもんじゃないですか? その点、この『あなたのための月の守護鳥』は完璧です。「ジャケット買い」ならぬ「タイトル読み」。そして中身はほんわかファンタジー。現在23話まで連載中。ゆるーく癒やされたい人におすすめ。

主人公はなんと、メスの小鳥さん。守護鳥と呼ばれる代々王宮で大切にされてきた鳥の、一番下の妹「砂」の視点で、昼間は砂漠、夜は海になってしまう不思議な大地に囲まれた王宮の日常が語られます。守護鳥と言ってもまだ雛なので、特別すごい力が使えるわけでもなく。王宮といえども熾烈な後継争いに巻き込まれたりするわけでもなく。今のところのんびりほんわかした雰囲気。果たして今後、砂ちゃんが秘められし未知の力を解放するときは来るのか――はわかりませんが、このゆるーい感じがいいんじゃないかな。


あなたのための月の守護鳥(作者:七草)

レビュー:異世界で本作るよ!『本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~』

昨日読み始めて1章全部一気読みしてしまった、『本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~』。タイトルも長いけど本文も長い! 現在271話、第3章まで投稿されていて、一話一話の文量も多めなので、たっぷり読みたい人におすすめ。

死んだと思ったら異世界に転生して、前世の知識を使ってのし上がる……というお約束の異世界転生モノですが、女性主人公って案外少ないので少女小説読みとしては嬉しい。恋愛要素は1章読了時点ではふんわり、匂わせ程度。

本好き22歳の麗乃が本に埋もれて異世界転生し、目が覚めると病弱5歳児のマインちゃんになっていた。中世ヨーロッパ風、本ナシ文明の利器ナシのとっても不衛生な世界で、前世の知識を使って試行錯誤しながら本が読みたい一心で奮闘するマインちゃん。幼児離れしたマイン&お隣さんのルッツは見ていてハラハラしますが、マインの愛すべき家族たちには癒されます。はじめ、不衛生だと見下していた家族のことを、いつの間にか大好きな本より大切に感じ始めているマインの変化が見どころ。

元商人で現兵士のオットー、ツンデレ?策士のベンノ、執事マルクさんなどなど、一癖も二癖もある商人たちがお気に入りなんだけど、今後いっぱい活躍してくれるといいなあ〜。


本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~(作者:香月 美夜)