なろう少女小説のススメ

なろう小説の中でも少女小説っぽい作品(独断)をレビューします。

レビュー:夢の中から甲冑の中へ…『黒騎士様の明日はどっちだ?!』

こういうの好きです。

黒騎士様の明日はどっちだ?!』は、夢の中から異世界のとある国の神殿に祀られている甲冑の中にトリップしてしまうタイプの異世界トリップ小説。

その国の神殿には、建国の英雄が着用したといわれる二つの甲冑が祀られており、主人公の女性は何の因果か、夢の中でそのうちの一つ、黒い甲冑の中へ入ってしまう。ちなみに白い甲冑には主人公と同年代らしき日本人男性が入っているようなのだが、お互い姿は甲冑だし、声しかわからないしで、ほとんどコミュニケーションもとれず。また、トリップしているのは夢を見ている間だけのことなので、時間も短く、目が覚めればそこは現実の世界。主人公自身も夢のなかのことはすぐ忘れてしまう。現実と夢の中では時間の流れが違うので、数十年〜数百年に一度甲冑に宿っては、ほんのすこし世界に干渉して、また日常に帰る、そんなお話です。

またたく間に過ぎてゆく別世界の速度だとか、その中で同志として同じ視点に立っている、名も知れない「白騎士」だとか、とにかく行間を妄想して楽しむタイプのお話かなあと。あくまで主人公=「黒騎士」の立場から見るとこういうお話ですが、別世界の住人視点で見れば壮大な歴史の物語だろうし、「黒騎士」より多い頻度で甲冑に入っている「白騎士」には、また別の物語があるのだろうし、描かれていないその部分が、文章にはないんだけれど必ず読者の頭のなかに生じている。空白を読ませている感じが、すごいなあと。

最後の最後まで、肝心なところは全部空白なんですが、その分妄想の余地があるのが好みでした。

全10話、完結済みです。

黒騎士様の明日はどっちだ?!(作者:遠)