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なろう少女小説のススメ

なろう小説の中でも少女小説っぽい作品(独断)をレビューします。

レビュー:雪国の静けさが聞こえる。『冬眠休暇はいりません』

しんしんと降り積もる雪、それに吸い込まれる音、無音の世界。静けさの中、暖炉でぱちぱちと火が灯るような物語です。

冬眠休暇はいりません』の、「冬眠休暇」とはなんぞや?というと、舞台である獣人の国レスタシアで、耳と尾を持つ住民たちが冬眠するために取る休暇のこと。短ければ数週間、長いと一月半の間、住民の大半が冬眠する厳冬期、異世界からやってきた冬眠のいらない種族=人間のアキは期間限定の職員としてギルドに雇われ、冬眠している家を「見回り」する仕事に就く。一日、一日と職員の減っていく中、アキは熊獣人のゲオルグと共に、静かな町を二人で回ることになる。

これといって大事件が起きるわけでもないし、派手な人間関係の衝突があるわけでもないこの物語の魅力は、なんといっても全編を通して根底に流れ続ける静けさでしょう。読んでいる間じゅう、耳元でチラチラと雪の舞う音が聞こえてくるようでした。

そしてこの寒々しい舞台の上で、主人公アキが抱える孤独は一層切ない。自立した働く成人女性が抱える孤独を、異世界トリップやファンタジーという文脈の中だからこそ嫌味なく書き出していると思います。

晩秋に始まる物語は、冬を越し、やがて春を迎えます。アキとゲオルグはどんな春を迎えるのか。

全13話、完結済みです。

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冬眠休暇はいりません(作者:羽月)